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トランプ政権、ベネズエラに対し制裁と体制転換を倍賭け これは「民主主義推進」ではなく、あらゆる必要な措置を講じた体制転換だの写真

2017/11/22

トランプ政権、ベネズエラに対し制裁と体制転換を倍賭け
これは「民主主義推進」ではなく、あらゆる必要な措置を講じた体制転換だ

マーク・ウェイスブロット(米国のエコノミスト&コラムニスト)
 
ベネズエラのマドゥロ大統領は11月3日、カラカスで同13日にベネズエラの公的債務の再編について協議する債権者会合の開催を...

トランプ政権、ベネズエラに対し制裁と体制転換を倍賭け
これは「民主主義推進」ではなく、あらゆる必要な措置を講じた体制転換だ

マーク・ウェイスブロット(米国のエコノミスト&コラムニスト)

 

ベネズエラのマドゥロ大統領は11月3日、カラカスで同13日にベネズエラの公的債務の再編について協議する債権者会合の開催を提案した。これに対し、トランプ米政権は8日、米国の債権者に対し、会合に出席すれば、米国の対ベネズエラ経済制裁に違反する可能性があると警告した。これに違反した場合、個人には最長30年の禁錮刑及び企業、金融機関には最大1000万ドルの罰金が科せられる。

 

米政府は翌11月9日、さらにベネズエラの政府高官10人を米国の制裁対象者リストに追加した。新たな制裁対象者には、選挙管理責任者とベネズエラ政府の主要食糧配給プログラムの責任者が含まれていた。

 

一連の対ベネズエラ制裁は、米国が署名した米州機構(OAS)憲章(第4章19項)及びその他の国際条約に違反する。

 

トランプ政権が制裁強化に踏み切った背景及び意図する(期待する)効果を理解することが重要である。フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員をはじめとする米共和党員らに促され、トランプ大統領は選挙の洗礼を受けたベネズエラ政府の転覆を後押ししようとしてきた。4ヶ月続いた暴力を伴う街頭抗議活動によっても結果ははかばかしくなく(さらに多くのベネズエラの民衆にも無視された末)、野党支持者の大半は10月15日に行われた統一州知事選に参加しようとした。

 

有力で最も信頼性のある親野党の世論調査機関・ダタナリシス(Datanálisis)は野党が圧勝し、18州を制すると予想した。しかしながら、結果は正反対だった。与党・統一社会党が23州での知事選で18州を制したのだ。

 

(ボリバル州では)接戦となった知事選を揺さぶった投票の集計結果の誤りがあるようだが‐これは調査すべきだ‐、この他の集計結果に問題はなく、野党の大半がこれを受け入れた。意外な選挙結果について、さまざまな解説が行われているが、最も信頼でき、重要なことは、野党支持者の棄権に加え、政権与党支持者の投票率が予想以上に高かったことにあるように思える。食糧配給の改善がベネズエラ政府を後押ししたようだ。

 

ベネズエラの野党勢力の敗因の1つと見られているのが、トランプ政権の制裁を支持したことである。世論調査機関・ダタナリシスの調査結果によると、ベネズエラの人々は賛成28.5%に対し61.4%が制裁に反対し、無差別抽出した有権者への聞き取りでは、70%以上が制裁に反対した。また、69%が野党連合と政府が対話を再開して欲しいと考えていた。体制転換の策略は挫折してしまっていたのだ。

 

だが、トランプ米政権は、体制転換と制裁双方に倍賭けするのを決めた。この戦略は、ベネズエラの人々を街頭に戻らせ、政府を打倒させるために、景気の回復を妨げ、(必須医薬品や基幹食糧を含む)物資不足を悪化させるのが目的のようである。

 

トランプ政権の制裁は、明らかに、新たな資金借り入れを妨害している。これは、大半の政府がほとんどの債務に対処していること、すなわち、債券が満期を迎えた際に元本支払いのために新たに借入を行い、元金の「借り替え」をベネズエラ政府ができなくしようと努める措置だ。一例を挙げると、ベネズエラ政府は先週、債務不履行を回避するため、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の社債の元本12億ドルの返済を急ぎ行わざるを得なかった。(ベネズエラは現在、国際市場での借入ができないでいるが、間もなく再開できる見通しである)。

 

米国の制裁はまた、債務の再編をより一層困難にし、不可能にしている。債務を再編する場合、元利の支払いは将来に先送りされ、債権者は新規債券を受け取る。制裁は明らかにこれを妨害している。トランプ政権は今や、債務再編の責任者であるタリック・エル・アイサミ副大統領とサイモン・ツァルパ経済相をそれぞれ麻薬密売と汚職の嫌疑で制裁対象者に指定しているとの口実の下、再編の交渉さえ脅かしている。トランプ政権は嫌疑の根拠をまったく提示していない。

 

米財務省は11月9日に声明を出し、「選挙違反の疑いの濃い、多数の不正投票によって、政権与党は州知事選で思いがけず多数を制した」との理由で、ベネズエラの選挙管理当局者を制裁対象者リストに載せたことを正当化した。声明はでっち上げであり、米政府が選挙結果を承認した最後の政府となった2013年のベネズエラ大統領選を思い出させる。この大統領選では、選挙当日の監査報告書の統計分析によると、野党が本当に勝利したとの公式な選挙結果を得る確率は25,000兆分の1以下であった。

 

だが、これは米国がベネズエラの体制転換に努めただけの話である。言い換えれば、選挙結果が是認されなければ、不正と宣言されざるを得ず、ベネズエラの現政権は合法性を失い、経済破たんする‐。米政府はこう目論んだのだ。

 

もちろん、経済の回復を求めるのなら、ベネズエラ政府は幾つかの本格的な経済改革に取り組む必要がある。最も重要なのは、年1000%を超えるインフレ率を引き下げるための、為替レートの一元管理などの改革政策である。だが、石油価格が6月の底値から33%上昇した結果、石油の減産にもかかわらず、ベネズエラの輸出は前年比28%増となっている(米投資銀行・トリノキャピタル<Torino Capital LLC>による2017年1月~8月期の推計)。

 

トランプ大統領率いる米政権、欧州連合(EU)に加盟する米国の同盟国政府、アルゼンチンやブラジルの右派政権及び狂信的な米州機構(OAS)の事務総長は、ベネズエラ経済が決して回復することはないと確信したいと考えている。 さらに、人権と民主主義についてありとあらゆる無駄口をたたいているにもかかわらず、ベネズエラ現政権の転覆を煽り、ベネズエラの民衆の苦しみを増大させる手段に訴えれば訴えるほど、彼らが推進しているのは平和的な戦略ではなくなる。これは「民主主義の推進」ではない。トランプは、ベネズエラに対して軍事介入すると示唆して威嚇した際、いつものように大声でまくし立てて、これがあらゆる必要な措置を講じた体制転換であることを明らかにした。

 

 

【著者紹介】マーク・ウェイスブロットは、(ワシントンDCに本部を置くシンクタンク)「アメリカ経済政策研究センター(CEPR)」の共同理事長であり、共同創設者である。CEPR共同理事長のディーン・ベイカーとの共著「社会保障:偽りの危機(Social Security:The Phony Crisis)」(シカゴ大学出版、2000年刊)のほか、経済政策に関する多数の研究論文・著作がある。また、(米国の独立会員制組織)「公正な外交政策(Just Foreign Policy)」の主宰者でもある。

 

 

翻訳:加治康男(独立ジャーナリスト)

 

出典:2017年11月13日付AlterNet掲載記事

 

Trump Doubles Down on Sanctions and Regime Change for Venezuela

This is not “democracy promotion,” it is regime change, by any means necessary.

https://www.alternet.org/world/trump-doubles-down-sanctions-and-regime-change-venezuela

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