経済
Economy

ベネズエラの経済は輸出主導型です。歴史的に、石油や石油派生製品の輸出に経済の基礎を置き、相当量の財を輸入してきました。

輸出しているのは主に原油(2015年時点で輸出全体の約76%)、精製された石油製品(同約17%)で、その他に鉄、アルミニウム、石炭、セメントなどの鉱物や、石油化学製品、鋼鉄など金属製品を輸出しています。一方、輸入しているのは精製された石油(ベネズエラが産出する超重質油の精製プロセスで使用するため。輸入全体の約8.03%)、医薬品(同4.68%)、食料品(肉・野菜)、繊維、機械などです。

目次

ベネズエラの主な貿易相手国

ベネズエラの主要な貿易相手国の中でも特に際立っているのがアメリカ合衆国です(2015年のデータでベネズエラの輸出全体の44%、輸入の28%を占める)。米国以外では、輸出ではインド(全体の19%)、中国(16%)、シンガポール、マレーシア、スペイン、日本(0.43%)などの他、ブラジル、コロンビア、ウルグアイ、ガイアナ、ペルー、チリ、エクアドルなどラテンアメリカ諸国へ輸出を行っています。輸入の面では、輸出より多様な国々が相手国となっており、米国に続く2位が中国(2015年のデータで輸入全体の約15%)、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、チリ、ペルー、ウルグアイといったラテンアメリカ諸国、ドイツ、イタリア、フランス、ポルトガル、スペイン、ロシアなどのヨーロッパ諸国、そして日本(0.87%)、インド、韓国、ベトナムなどアジア諸国から輸入を行っています。

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ベネズエラの石油埋蔵量

ベネズエラは世界最大の原油確認埋蔵量を持ち、その量は2,983億5,300万バレルにのぼります。石油生産及び石油輸出では、ともに世界第9位です。

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ベネズエラ経済の憲法上の枠組み

ベネズエラ・ボリバル共和国憲法は、その第6編「社会経済制度」第1章「社会経済体制及び経済における国の役割」及び第2章「財政及び金融制度」で、国の経済体制を定義しています。この中で、ベネズエラ経済は混合経済であるとされています。つまり、経済的自由権、所有権、民間主導、自由競争に基づくと同時に国家が市場への介入を行う、社会的市場経済です。国家は、民主主義、有効性、自由競争、環境保護、生産性、連帯などといった価値を確保するため、市場の機能と社会的正義の均衡を図ることを目的として介入を行います。憲法が定める重要な前提条件として、石油産業、その他公益に関わり戦略的性質を持つ産業や財・サービスについては国が所有することとされています。

ベネズエラの石油開発は、ベネズエラ国営石油公社(PDVSA)が行っています。最初の生産は1875年、タチラ州にあるラ・アルキトラナ農園で行われました。1914年にはマラカイボ湖近くのZumaque I油田で初めて石油が採掘され、これを境に大規模な石油の商業開発が始まるとともに、国の経済は劇的な変化を遂げることとなりました。かつての農業国は、1950年から1980年の間継続的な成長を記録し、多くの移民が流入しました。その頃からベネズエラ経済における石油の重要性が増し、エネルギー市場における石油の動向が国の経済に直接影響するようになりました。ベネズエラは石油輸出国機構(OPEC)の設立当初からの加盟国であり、同機構において活発な活動を行っています。

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経済計画

1999年にウゴ・チャベス大統領の最初の任期が始まって以来、ベネズエラ経済に関して大きく三つの計画が打ち立てられてきました。一つ目は経済社会開発計画2001-2007(Líneas Generales del Plan de Desarrollo 2001-2007)で、次の5つの「均衡」“equilibrio”から構成されています。「経済の均衡」(多角化を通じて生産的経済を発展させる)、「社会の均衡」(社会的包摂・インクルージョンを進めることによって公平な社会を実現する)、「政治の均衡」(国民が主役でありかつ共同責任に基づく政治参加を通じて、ボリバル主義的民主主義を達成する)、「国土の均衡」(特定地域への集中を脱し分散化することを通じて国土を統治する)、「国際的均衡」(多極化を通じて国家主権を強化し多極的世界を推進する)。

二つ目の計画は、チャベス大統領の二度目の再選時に提示された第一次国家社会主義計画2007-2013(Primer Plan Socialista de la Nación 2007-2013)です。この計画は国家を「21世紀の社会主義」へと方向付けており、7つの指針から構成されています。「新たな社会主義的倫理観」(ヒューマニズムの価値と原則及びシモン・ボリバルの考えに基づいて国を再建する)、「革命的かつ国民が主役の民主主義」(社会的組織及び集団の力の強化)、「社会主義的生産様式」(社会の分断や労働のヒエラルキー構造を排除し、資本の再生産よりも人々の必要性を優先する)、「新たな国家地政学」(均衡ある国土開発)、「世界的なエネルギー大国としてのベネズエラ」(外部の資源を獲得するツールとして、及び国内の投資や社会主義的生産様式の原動力としての石油活用)、「新たな国際的地政学」(国民間の対話、民族自決、良心の自由の尊重を通じて多極的世界を構築する)。

チャベス大統領の三度目の再選とその後のニコラス・マドゥーロ大統領の大統領選出により、第二次国家社会主義計画2013-2019(Segundo Plan Socialista de la Nación 2013-2019)、通称「祖国の計画(Plan de la Patria)」が始まります。その目的は、「後退することのない段階に至る」まで「社会主義への移行プロセスを加速する」ことです。この目的のため、大きく5つの歴史的目標を掲げています。1.「我々が200年ぶりに取り戻した最も価値ある財産、“国家の独立”を守り、拡大し、強化すること」。2.「破壊的で優勝劣敗の資本主義の制度に代わり、ベネズエラで21世紀のボリバル主義的社会主義を築き続けること。そうして最大の社会保障、最大の政治的安定、最大の国民の幸福を確保すること」。3.「ラ米・カリブという芽生えつつある大きな潜在力の中で、ベネズエラを社会、経済、政治的な大国とすること。なお、ラ米・カリブは米州に平和地帯を構築することを保証するものである」。4.「世界の均衡と平和が保証される多極的世界を実現する、新しい国際地政学の発展に寄与すること」。そして最後に、5.「惑星の生命を保護し人類を救うこと」です。

この「祖国の計画」を実行するため、ニコラス・マドゥーロ大統領は2016年、ボリバル主義経済計画(Agenda Económica Bolivariana)を打ち出しています。これは14の戦略的推進分野を後押しする計画で、生産活動の多様化を図ることで、国際的な石油価格の下落により我が国が直面している経済情勢に対応することを目的としています。

この計画には、公営及び民間の企業が国家経済審議会(Consejo Nacional de Economía Productiva)を通じて参加することが想定されており、生活に必要な50の優先品目とそれを生産する36の生産チェーン、及びこれらを牽引する14の推進分野の促進を行うこととしています。14の推進分野には、石油・天然ガス、石油化学、食糧・農業、鉱業、通信・情報科学、建築、工業、軍事産業、観光、森林(製材・製紙等)、地域・社会経済、銀行・金融、輸出ほか新しい外貨獲得手段、製薬が含まれます。

この計画の目的は、実体経済の主要な担い手となる分野の再活性化です。国の生産力を上げることで、自給力の向上及び輸出の多様化を図ろうとするものです。

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オリノコベルト

上記のうち石油・天然ガス分野の促進のため、マドゥーロ大統領は「オリノコベルト”ウゴ・チャベス”国家戦略開発地域(Zona de Desarrollo Estratégico Nacional de la Faja Petrolífera del Orinoco “Hugo Chávez”)」の設置を決定しました。大量の石油が埋蔵されているオリノコ川流域のこのエリアでは、鉱業、農業、サービス、通信その他の分野に関するプロジェクトが実施されます。

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ボリバル主義経済計画における鉱業分野の取組み

2016年1月14日、60日間の経済緊急事態 (60日間の延長が可能)が発令されました。これは、主に石油価格の下落により置かれているベネズエラの経済状況への対策の一環としてマドゥーロ大統領が採ったもので、その後2016年5月13日に延長されました。

この緊急事態令の一環として、大統領は2016年1月、第一副大統領の指揮下に国家経済審議会を設置し、民間・公営企業がボリバル主義経済計画の進展に参加できるようにしました。

ボリバル主義経済計画は、石油収入への依存を克服する新しい発展モデルの構築を通じて、経済を回復させ、再度発展させることを目的としています。

国家経済審議会が推進するボリバル主義経済政策は、生活に必要な50の優先品目とそれを生産する36の生産チェーンの促進を目指しており、その達成のため「祖国の14の推進分野」に着手しました。この14分野の中には鉱業も含まれています。

2016年2月25日、35カ国以上から150社が集まった会合で、マドゥーロ大統領がこの「鉱業推進」の幕を切って落としました。

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国家戦略開発地帯「オリノコ・ミネラル・アーチ地帯」

この会合では、マドゥーロ大統領は国家戦略開発地帯「オリノコ・ミネラル・アーチ地帯」の設置に関する大統領令第2248号に署名しました。これは、主権と持続可能性に基づいて、鉱物資源に関する活動を部門別に促進するためのものです。オリノコ・ミネラル・アーチ地帯の設置は、鉱業推進の基幹プロジェクトです。

オリノコ・ミネラル・アーチ地帯は総面積111,843.7平方キロメートルで、ボリバル州セデニョ市からオリノコ川に沿って伸び、同州シフォンテス市にまで及びます(アマソナス州は含みません)。ベネズエラの国土全体の12.2%を占める広大な土地で、オリノコベルト(オリノコ川流域の石油産出地帯)のほぼ2倍の広さです。鉱物の確認埋蔵量及び推定埋蔵量は、次の通りです。

  • ・鉄(推定埋蔵量147億7800万トン、うち確認埋蔵量59億6,700万トン)。全体の40%を占める。
  • ・ボーキサイト(推定埋蔵量21億4,700万トン、うち確認埋蔵量2億5,600万トン)
  • ・金(推定埋蔵量4,136トン、うち確認埋蔵量792トン。※クユニ金鉱地帯のみの埋蔵量)
  • ・銅、ダイヤモンド、コルタン、その他の価値ある工業向け鉱物 オリノコ・ミネラル・アーチ地帯は、4つのエリアに分かれます。
  • エリア1:西端からクチベロ川までのエリア。主な鉱物はボーキサイト、コルタン、レア・アース、ダイヤモンド。面積は24,680.11平方キロメートル。
  • エリア2:クチベロ川とアロ川に挟まれたエリア。主な鉱物は鉄、金。面積は17,246.16平方キロメートル。
  • エリア3:アロ川から東に広がるエリア。主な鉱物はボーキサイト、金、鉄。面積は29,730.37平方キロメートル。
  • エリア4:イマタカ山脈エリア。主な鉱物は金、ボーキサイト、銅、カオリン、ドロマイト。面積は40,149.69平方キロメートル。

民間及び外国からの投資を呼び込むため、オリノコ・ミネラル・アーチ地帯では特別な契約の枠組み、税の優遇を含む特別な税制度、地帯内でのプロジェクトに必要な輸入の便の向上、特別な関税の制度といったものを設ける予定としています。

民間及び外国からの投資を通じて、次のような目標が達成されることが期待されています。

  1. 生産
  2. GDPへの貢献
  3. 輸入代替
  4. 輸出の創出
  5. 技術移転
  6. 社会投資
  7. 生産的投資
  8. 生産コストの低減
  9. 環境保護
  10. 技術開発

2016年6月9日には鉱業開発・エコロジー省が新設されました。人類と環境を常に尊重した上で枯渇性資源の採掘、開発、利用及び管理を行うことを使命としています。

鉱業開発・エコロジー省は以下の組織を所掌しています。

  • ・ベネズエラ鉱業公社((Corporacion Venezolana de Mineria:CVM):2013年1月設立。ベネズエラ南部ボリバル州の5つのブロック(合計面積35,000ヘクタール)の探査・採掘を運営することを目的とする。
  • ・金開発国営企業Minerven(Corporación Venezolana de Guayana Minerven C.A.: Minerven):金鉱を有するエル・カジャオ市(ボリバル州南部)で営業。金の採鉱で100年以上の歴史を持つ。
  • ・国立地質鉱山研究所(Instituto Nacional de Geología y Minería: INGEOMIN):国内の地質及び鉱山の研究を促進するため1999年に設立。

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オリノコ・ミネラル・アーチ地帯への民間企業・外国企業の参加

鉱業開発・エコロジー省は、企業の参画について基準を設定しました。そのうち以下の点が特筆されます。

  • ・鉱業分野のオペレーターとして、周知の経験を有すること。
  • ・環境に配慮した操業・手法につき認識を有すること。
  • ・環境社会主義国の定める法令・参加条件に従うこと。すなわち、主な参加方法はベネズエラ政府が55%以上出資する半官半民企業の設立であること。
  • ・参画を希望する企業とベネズエラの間にWin-Winで利益をもたらす枠組みがあること。
  • 鉱物資源開発に関わる税制法

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