ベネズエラにおける人権の状況等に関する国連の独立専門家による報告書(要点)
国連の人権分野の独立専門家、アルフレッド・デ・ゼイヤス氏が2017年12月にベネズエラを訪れ調査した結果をまとめた報告書が今年8月に公表されました。
報告書の要点を以下のとおり掲載します。(報告書全文へのリンクはページ末尾に掲載)
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独立専門家アルフレッド・デ・ゼイヤス氏による民主的かつ公正な国際秩序の推進に関する報告書(要点)
1.2018年3月23日、国連人権委員会は一方的な抑圧手段を賛成28票、反対15票、棄権3票で非難した。これは経済制裁により死者が発生し、経済危機が深刻化し、食料や医薬品の生産と分配を歪め、移民を生む要因になると共に人権侵害の原因となることが証明されたことによる。2017年11月にマラリアの出現と闘うために注文された抗マラリア薬の供給をコロンビアが拒んだという事実、及び国際社会がこのような決定を非難しなかったという事実は、危機の深刻化の共同責任を示唆する。この時には、抗マラリア薬はインドから輸入せざるを得なかった。(報告書第35項目)
2.オバマ大統領及びトランプ大統領による制裁並びにカナダ及びEUが適用した一方的手段の影響で、インスリンや抗レトロウイルス薬といった薬剤の不足が直接的・間接的に深刻化した。(第36項目)
3.米国は現在、ベネズエラの国家機関を締め上げることを目的としたイニシアチブにおいて、ベネズエラに新たな制裁を課すことを目的とした法令を書く方法について外国人弁護士に訓練を行っている。(第37項目)
4.一方的な抑圧手段や金融封鎖が経済危機を深刻化させ、失業やコロンビア、ブラジル、エクアドル等への移民を生んだことは証明され得る。(第38項目)
5.経済的締め上げ策は、チリ、ニカラグア、シリア、北朝鮮で既に実行された策に匹敵するものである。(第39項目)
6.不安を煽るようなメディアキャンペーンを通じて、ベネズエラには「人道危機」が存在するとの先入観を観察者らに持たせるような努力がなされている。専門家は、誇張表現には慎重でなければならない。なぜなら「人道危機」は、軍事介入の口実として不適切に使用され得る専門用語だからである。(第42項目)
7.反対に、ベネズエラ国民への国際的な連帯は、現在の物資不足を軽減するための自由な食料品・医薬品の流通に資するはずである。その支援は真に人道的なものとなり、後の政治的な目的を追求するようなものではないはずである。
8.ベネズエラにおける「危機」とは経済的危機であり、ガザ、イエメン、リビア、シリア、イラク、ハイチ、マリ、中央アフリカ共和国、南スーダン、ソマリア等における人道危機とは比較され得るものではない。2017年12月及び2018年3月の国連食糧農業機関(FAO)の報告書では37カ国における食糧危機が列挙されているが、その中にベネズエラは含まれていない。(第45項目)
9.決まった型に沿うよう独立専門家に圧力をかけるような威嚇の雰囲気がミッションを支配していた。当該独立専門家は「適当な」報告者ではないので続行するなと求め、報告書に書くべき内容をほとんど指示するような書簡が独立専門家に届いた。(第48項目)
10.ベネズエラは重大な経済危機に直面してはいるが、政府は腕をこまねいている訳ではない。課題を乗り越えるために国際的な援助を求め、経済を多様化し、負債の再編を試みている。制裁は、後発医薬品や、農業生産を増やすための種子の生産に必要な輸入を妨げ、状況を悪化させるのみである。また、制裁は移民をももたらしている。(第63項目)
11.当該独立専門家は国連総会に次のことを勧告する。米国による対キューバ封鎖に関する決議と類似の条項を持つ決議を採択し、対ベネズエラ制裁は国際法及び人権法に反すると宣言すること。(第67項目)