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グスタボ・ドゥダメル アメリカ国民芸術勲章文化勲章 授賞式での基調講演の写真

2016/12/07

グスタボ・ドゥダメル アメリカ国民芸術勲章文化勲章 授賞式での基調講演

9月22日、米国ワシントンDCにて開催された「2015年アメリカ国民芸術勲章文化勲章 授賞式」で、エル・システマ出身の指揮者、...

グスタボ・ドゥダメル アメリカ国民芸術勲章文化勲章 授賞式での基調講演

9月22日、米国ワシントンDCにて開催された「2015年アメリカ国民芸術勲章文化勲章 授賞式」で、エル・システマ出身の指揮者、クスタボ・ドゥダメルが基調講演を行いました。

「音楽は私の言語です。この言語を通してオペラもしくは交響曲、または他の形の音楽表現を指揮するのが私の仕事です。しかし今夜、私の前にオーケストラはいません。聴衆のみなさんに対し、音楽ではなく言葉でスピーチを読みあげることをお許しください。

どのような言語でも、最初に学ぶべき言葉は「ありがとう」でしょう。私も、この素晴らしい名誉に対し、感謝の言葉から始めたいと思います。今夜、素晴らしいクリエイター、ヒューマニスト、そして誇り高いゲストの皆さんの中にいるのを恐縮しつつも、喜びの心持でいっぱいです。

もちろん私ひとりとして感謝するべきではないと感じています。

米国での暮らしを築いてきた、何百万ものラテン系の方々とともに感謝を申し上げます。

あるひとつのお話があります。ささやかですが、私にとって、とても大切なお話です。

私は、LAフィルの指揮を始める前から、YOLA(Youth Orchestra of Los Angeles)の設立に向けて取り組んできました。最初の取り組みは南中央ロサンゼルスで始まりました。

当時、その地域は最も問題のある地域のひとつでした。

アダムという12歳の男の子に出会ったのはその場所でした。アダムはお母さんのトレイシーと2人、治安の悪い地区で暮らしていました。彼は、子どもオーケストラのためのオーディションが行われると知り、お母さんを連れて現れました。LAフィルのパーカショニストになるのが彼の夢だと教えてくれたのが、彼の母親でした。

アダムと私はそれぞれ違う場所からやってきましたが、共通な何かを持っていました。それは夢、私たちは共通の夢を持っていたのです。

数か月後、アダムの、つまり“YOLA”のコンサートが行われました。コミュニティーのための無料コンサートで、場所は彼らのよく知る“ハリウッドボール”でした。ジョン・ウィリアムズ、クィンシー・ジョーンズなど、18,000名が参加していました。

私にとっても、LAフィル芸術監督としての初めてのコンサートであり、アダムと同様、恐怖感を抱いていました。考えてみてください。レナード・バーンスタインやヴァン・クライバーン、ジミ・ヘンドリックス、フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ルイ・アームストロングがかつて立った同じ舞台に立つのは、容易なことではありません。アダムがその偉人たちが誰か、知らなかったとしても。

私たちのユリシーズ、ちいさなヒーローが、ドラムのスティックを持ち、希望に向かって一歩を踏み出したのです。

今夜、この素晴らしい会場は、感動の気持ちで満たされています。観客のみなさん、その男の子が、数か月ほどでそれまでと違う男の子となり、その夜私の前で情熱をもって演奏し、自分でビートを刻んで精一杯表現し、私を含む18,000人を感動させた少年の話を理解していただいたと思います。

私の師、マエストロ・ホセ・アントニオ・アブレウはかつてこう話していました。現代世界の最も悪い過ちは、子どもたちから美しいものへのインスピレーションを奪うことだ、と。

あきらかに私たちは難しい時代を生きています。世界各所に起こる財政難で、学校の予算も削られます。最初に行われることは、芸術や音楽の予算を削ること。なぜなら芸術は、“欠かせないもの”と見なされていないからです。

でも、それは違う。

芸術は贅沢なもので、危機的状況ではのぞかれるべきだ、と考える人がいます。彼らは、そういう時こそ芸術へアクセスを閉ざすことは許されざる罪であることを理解しなければなりません。

私の愛するベネズエラは、まさにいま、そのような危機的状況に置かれています。人びとは、食べるもの、薬、生活に必要なものを探し求め、日々暮らしています。

もちろん議論があります。-必需品にも手が届かないとき、どうやって音楽や芸術を楽しむ資金を手に入れたらいいのか。

最近このような質問を投げかけられました。「エル・システマはベネズエラを救うことができるか」

でも、私には、「ベネズエラはエル・システマを救うことができるか」という質問がしっくりと来ます。

ベネズエラの人びと、彼らの希望にとって、重要な問題はそれなのです。

ベネズエラが今のような経済危機になってから、エル・システマが夢を失う人びとを勇気づけ続けるということは、日々確証してきたのです。

芸術は魂に栄養を与えます。

子どもたちは、かけ橋をデザインする建築を学び、その資金を計算するために数学を学ぶ。子どもたちは、科学を通して人間性を養い、筋力をつけ、スポーツを通して体の限界について知るでしょう。

芸術も同じように命にかかわるもの。芸術がなければ、人間性を鈍らせてしまいます。そこを理解すべきなのです。

アルタミラの洞窟からジャクソン・ポロック、リン・マニュエル・ミランダの「ハミルトン」のような勇敢で心に残る歌詞など、芸術は人間の人生の重要な旅に連れ添ってきたのです。

心が健全であることは、体が健康であるということと同じくらい重要です。私たちは、健康な体を保つためことを目的をして精神を養うべきと考えます。生命保険会社がコンサートや美術館、ギャラリーへの無料入場券を配ったりします。おそらく、オバマケア(医療保険制度改革)の新しい対策の一つになりえるでしょう。

私の職業は音楽ですが、使命の対象は子どもたちです。とくに、どのように彼らに教えるか、が重要です。そして、貢献すればするほど、次の世代に引き継がれていくと確信しています。

子どもたちに未来を創りたい、でもここに問題があります。

この目くるめく変わる世界において、未来がもたらすものが何か、分からないということです。数学が含まれていくことは確かでしょう(現代のように!)。そしてもちろん、精神を育んでいかなければなりません。子どもは精神だけではないのです。魂なのです。私たちは、魂をも養わなければなりません。

ここにいるすべての方々が、未来における芸術を創り、広げていけたら…。

だからこそロサンゼルスのアダムのような、子どもたちの夢や心に投資しようと呼びかけたいのです。何百万もの子どもたちが、彼のように、希望と美を探し求めることができるのです。シラーが言うように、“すべてのひとの共感となれば”美は人びとを結ぶ唯一のコミュニケーションの形です。

人類がこの世に生まれ、壁に絵を描き始めてから、私たちは表現というものと強く繋がっています。将来、どのようなテクノロジーを使い続けているのかわからない、どのような変化が訪れるかも、分からない。フェイスブックやポケモン・ゴー、ツイッターもどうなっているか分からない。コンピューターが消えるかもしれないし、まったく違う何かが生まれているかもしれません。あらゆることが可能です。

でも、どんな未来がやってこようとも、私たちの気持ちを表現し続けなければならない、ということは不変です。それが芸術なのです。

芸術は未来。

さぁ、芸術を育み、抱きしめ、伸ばす環境を創りましょう。

もう子どもたちには準備ができています。

ありがとうございました」

翻訳:松村真澄(ピースボート)

スピーチ原文はこちら

エル・システマについてはこちら

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